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術後悪心嘔吐治療のための芳香療法(アロマセラピー)

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アブストラクト

背景

術後の悪心・嘔吐は発現頻度の高い不快な現象で、現行の治療法は必ずしもすべての患者に対して有効ではない。現行の治療戦略に追加可能な療法として、芳香療法が提案されている。

目的

本レビューでは、既定の術後の悪心・嘔吐の重症度および発現期間に対する芳香療法の利用効果の同定し、また、芳香療法の安全性および臨床効果を標準的な薬物治療と比較することを試みた。

検索方法

Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2011年第3版)、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、CAM on PubMed、Meditext、LILACSおよびISI Web of Scienceならびに灰色文献や検索文献の参考文献リストを検索した。 2011年8月までのデータベース検索を行った。

選択基準

術後の悪心・嘔吐の治療に芳香療法を使用したすべてのランダム化比較試験(RCT)および比較臨床試験(CCT)を対象とした。あらゆるタイプの芳香療法を介入とみなした。芳香療法は、治療の有益性を目的とした物質の蒸気の吸引と定義した。主要アウトカムは術後の悪心・嘔吐の重症度および期間とした。副次アウトカムは有害作用、制吐剤のレスキュー投与および治療に対する患者の満足度とした。

データ収集と分析

2名のレビュー著者が、対象研究および抽出データのバイアスのリスク評価を行った。分析したアウトカムはすべて2値変数であったため、固定効果モデルを用いて相対リスク(RR)とその95%信頼区間(95% CI)を算出した。

主な結果

9件の試験の内訳は、RCT6件およびCCT3件で、参加者の合計は402例であった。一部の研究では、参加者全員の平均年齢および年齢範囲のデータが得られなかった。対象とした6件のRCTのうち4件ではランダム化の方法が明確に記載されており、適切にランダム化されていた。報告内容の不十分なデータが、分析の完全性に影響を及ぼした。イソプロピルアルコール蒸気の吸引は、プラセボと比較して制吐剤のレスキュー投与を要する参加者の割合を低下させる効果があった(RR 0.30, 95% CI 0.09〜1.00, P= 0.05)。一方、標準的な制吐剤治療と比較した場合、交絡を有する可能性がある研究のデータを含めた場合(RR 0.66, 95% CI 0.45〜0.98, P = 0.04)を除いて、イソプロピルアルコールが制吐剤のレスキュー投与を要する参加者の割合を低下させる効果は認められなかった(RR 0.66, 95% CI 0.39〜1.13, P = 0.13)。芳香療法に関する患者の満足度データが報告されている研究では、群間で統計学的有意差は認められなかった(RR 1.12, 95% CI 0.62〜2.03, P = 0.71)。

著者の結論

イソプロピルアルコールはプラセボの生理食塩水と比較して術後の悪心・嘔吐の軽減効果が高かったが、標準的な制吐剤よりも効果は低かった。現時点では、ペパーミントエッセンシャルオイルの使用に関して信頼できるエビデンスはない。

PICO

Population
Intervention
Comparison
Outcome

El uso y la enseñanza del modelo PICO están muy extendidos en el ámbito de la atención sanitaria basada en la evidencia para formular preguntas y estrategias de búsqueda y para caracterizar estudios o metanálisis clínicos. PICO son las siglas en inglés de cuatro posibles componentes de una pregunta de investigación: paciente, población o problema; intervención; comparación; desenlace (outcome).

Para saber más sobre el uso del modelo PICO, puede consultar el Manual Cochrane.

一般語訳

術後悪心嘔吐治療のための芳香療法(アロマセラピー)

術後の悪心・嘔吐(PONV)は手術によって発生することが多い不快な副作用で、揮発性薬剤による全身麻酔(吸入麻酔)を受けた患者全体の20%〜30%が、中等度から高度の悪心や嘔吐を経験している。悪心とは胃の不快感やむかつきのことで、その後に嘔吐(口からの胃内容物の強制的排出)が認められる場合もある。現在使用されている薬物治療は必ずしも効果的ではなく、不快な有害作用をもたらす場合もある。芳香療法(アロマセラピー)は、現時点ではその有効性に関する十分なエビデンスが得られていないが、悪心や嘔吐の治療に推奨されることがある。芳香療法では、身体的症状や感情的症状を治療または軽減するために、エッセンシャルオイルや他の物質の蒸気を吸引する。我々は、参加者計402例を対象としたPONVに対する芳香療法の研究9件を検証した。イソプロピルアルコール蒸気を短時間吸引した6件の試験では、術後の悪心・嘔吐の軽減に多少の効果が認められたが、その効果は標準的な薬物治療と比べて弱いものであった。いくつかの研究では、その設計内容が原因で中等度のバイアスのリスクが認められた。イソプロピルアルコールは皮膚消毒用アルコールとしても知られており、通常、注射の前に皮膚を消毒する「アルコール綿」として用いられている。現時点では、術後の悪心・嘔吐の治療において、ペパーミントエッセンシャルオイルなど他の芳香療法の使用を支持する信頼できるエビデンスは認められない。レビューの対象としたいずれの研究でも、芳香療法の使用による有害作用は認められなかった。