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慢性膵炎に対する膵酵素

Contraer todo Desplegar todo

アブストラクト

背景

疼痛の緩和および脂肪便の改善に対する膵酵素の有効性には議論の余地があり、膵酵素のエビデンスに基づいた有用性を評価する必要がある。

目的

慢性膵炎患者に対する膵酵素の有効性について評価すること。具体的な目的は、以下を比較することであった。1)膵酵素とプラセボとの比較、2)異なる膵酵素製剤および3)膵酵素製剤の異なる投与スケジュール。以下のアウトカムを評価した。腹痛の頻度の変化、疼痛発作の期間、疼痛の強さ、体重減少、脂肪便、糞便脂肪および生活の質。

検索戦略

すべての発表済みおよび未発表の文献を検出するための検索方法を考案し、この検索に、CENTRAL(The Cochrane Library 2009年、 第1号)、MEDLINE(1965~2009年2月)、EMBASE(1974~2009年2月)を含めた。関連する試験をさらに同定するため、引用文献の一覧表および会議の議事録の発表済みアブストラクトのハンドサーチを行った。最新の検索日は2009年4月であった。

選択基準

盲検または非盲検のランダム化比較試験。十分な情報が利用できる場合は、アブストラクトまたは未発表データを含めた。

データ収集と分析

2名の著者が、それぞれ試験のアウトカムに関するデータを抽出、統合した。標準化平均差(SMD)を用いて連続データと95%信頼区間(CI)を結び付け、2値データ(95% CI)に対しオッズ比(OR)を算出した。

主な結果

参加者361名を対象とした10件の試験が組み入れ基準を満たした。すべてがランダム化試験で、そのうち2件が並行デザイン、残りがクロスオーバーデザインであった。それぞれの試験では、疼痛、脂肪便の発生率および鎮痛剤消費量の改善における、プラセボに対する膵酵素の有益な効果が報告されたものもあったが、このようなアウトカム対し、これらの試験結果を統合することはできなかった。膵酵素の使用による、体重減少(kg)に対する有意な利益は認められなかった(SMD 0.06; 95% CI ‐0.23~0.34)。糞便脂肪(g/day)では有意な減少が認められ(SMD ‐1.03; 95% CI ‐1.60~‐0.46)、試験対象者の疾患症状尺度の臨床全般印象度では、有意差は認められなかった(SMD ‐0.63; 95% CI ‐1.41~0.14)。酵素製剤の特定の投与スケジュールまたは酵素の種類による糞便脂肪の減少に対する有意な利益は認められなかった。

別の小規模試験では、糞便脂肪に対する食事に関して、酵素製剤の投与のタイミングに対する有意な利益は示されなかった。

著者の結論

慢性膵炎患者の腹痛、体重減少、脂肪便、鎮痛剤使用および生活の質に対する膵酵素の役割は、多義的なままである。良質で十分な検出力の臨床試験が必要である。

一般語訳

慢性膵炎に対する膵酵素

慢性膵炎は、世界中の人口のほぼ0.04%~5%が苦しんでいる疾患である。この疾患では、腹痛、脂肪便および体重減少を繰り返し発症し、無症状の場合もある。患者は、さまざまな期間にわたり、合併症を発症する可能性がある。このような患者の治療には、膵酵素製剤が処方されることも多いこの治療は、腹痛、体重減少、鎮痛剤使用、脂肪便および生活の質などのさまざまなアウトカムに対する膵酵素の利益が示された試験に基づいている。しかし、これらの試験から慢性膵炎患者における膵酵素の役割に関する総合的な結論を確立する必要がある。本システマティックレビューの目的は、膵酵素に、慢性膵炎におけるさまざまなパラメーターを用いて利益があるかどうかを評価し、異なる種類の酵素製剤を比較し、異なる投与スケジュールが多様なアウトカムに影響を及ぼすかどうかを評価するため、このテーマに関するすべての発表済みおよび未発表データを収集することであった。本レビューには10件の試験を組み入れた。これらの試験に登録した患者は少数であった。個々の試験では、上記のパラメーターに対するさまざまな程度の利益が示されたが、これらの試験結果は集積できなかった。今のところ利用可能なエビデンスでは、慢性膵炎患者における膵酵素の利益に対する確定的な結論は出せていない。