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全身性エリテマトーデスに対するデヒドロエピアンドロステロン

Abstract

背景

全身性エリテマトーデス(SLE)は、慢性炎症性多臓器系自己免疫疾患である。デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は天然型不活性ステロイドであり、疾病活性を調整する特性を持ち、また症状の再燃やステロイド投与の必要性を減少させる作用を持つ可能性がある。

目的

全身性エリテマトーデス患者の治療でのデヒドロエピアンドロステロンの有効性と安全性について、プラセボと比較評価する。

検索戦略

Cochrane Library(2006年第2号)、MEDLINE、Pub Med、EMBASE、Science Citation IndexおよびISI Proceedings、またGenelabs、FDAおよびEMEAのウェブサイトを検索した。(実施時期の記載がない検索は2006年6月実施)。

選択基準

SLE患者を対象にDHEAをプラセボと比較した最低3カ月間の期間実施したランダム化比較試験を対象とした。

データ収集と分析

2名のレビュー著者が品質評価およびデータ抽出を行った。

主な結果

現在までに特定された7件のランダム化比較試験(参加者842例)から、DHEAについて、次に示すように「ゴールド」レベルにランク付けされたエビデンスが得られている(www.cochranemsk.org):

DHEAは、全身性エリテマトーデス疾患活動性指標(SLEDAI)または全身性狼瘡活動性指標(SLAM)に基づく軽度/中等症患者では臨床効果はほとんど示さなかったが、1件の試験ではDHEA投与はプラセボと比較して8.3%多くの患者で安定化または改善を示すエビデンスが認められた。DHEAでは、Patient Global Assessment(患者による全体的評価)の測定による健康に関連した生活の質については、わずかではあるが臨床的に有意な改善を示し、メタアナリシスにより改善度は11.5%(100 mm尺度で11.5mm)と推定された。プラセボと比較し、DHEAでは有害事象、特に座瘡などのアンドロゲンによる影響が認められた患者が増加し、患者リスクが倍増した(RR:2.2、95%CI:1.65〜2.83)。

著者の結論

SLEに対するDHEAの有効性の検討は困難であり、SLEと同様に複雑な疾患に対する治療の研究における問題が認められる。現在まで特定された7件のランダム化比較試験から、DHEAは短期間で健康に関連した生活の質に関して、わずかではあるが臨床的に重要な影響を及ぼすとしたエビデンスが得られている。この結果を報告した6件の研究のうち1件を除き、疾患活性度への作用については一貫性が認められず、DHEAではSLEDAIの変化の点でプラセボ対する優位性が認められなかった。長期的なアウトカムと安全性については未だ研究されていない。

PICO

Population
Intervention
Comparison
Outcome

El uso y la enseñanza del modelo PICO están muy extendidos en el ámbito de la atención sanitaria basada en la evidencia para formular preguntas y estrategias de búsqueda y para caracterizar estudios o metanálisis clínicos. PICO son las siglas en inglés de cuatro posibles componentes de una pregunta de investigación: paciente, población o problema; intervención; comparación; desenlace (outcome).

Para saber más sobre el uso del modelo PICO, puede consultar el Manual Cochrane.

Plain language summary

全身性エリテマトーデスに対するデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)

このコクラン・レビューの要約では、全身性エリテマトーデス(SLE)に対するデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の効果の研究で得られた知見を述べる。本レビューから以下が示されている。

DHEAは、疾患活性度が軽度から中等度の患者ではほとんどまたは全く改善の差が認められないが、わずかに健康を総合的に改善する可能性がある。これらの結果は、中程度の質のエビデンスに基づくものである。DHEAは、重症または活動性のSLE患者での疾患活動性を改善する可能性はあるが、この結果は低品質のエビデンスに基づいているため、確実なエビデンスが十分に得られていない。これらの研究ではSLEによる臓器への損傷について評価していないため、DHEAがSLEによる損傷を低減させるか不明である。副作用としては、座瘡、多毛症、および月経周期の変化が生じる可能性がある。ただし、多くの場合、副作用や合併症に関して正確な情報は得られていない。DHEAの心臓病や癌などの長期的な副作用の誘発能については知られていない。これは、研究参加者数が十分でなく、研究期間も最長でわずか1年であったことが原因である。

全身性エリテマトーデス(SLE)とDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)について

全身性エリテマトーデス(SLE)または「狼瘡(lupus)」とも呼ばれ、身体の免疫系が身体を攻撃する疾患群である。皮膚、腎臓、眼球、肺、心臓、筋肉、骨、神経系、胃腸系などの結合組織を含む臓器系に影響を及ぼす可能性がある。症状は軽度から生命を脅かすまで及ぶ。SLEは、主に若い女性に認められるが、男性および小児にも生じる。DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は体内のホルモンである。SLE患者はDHEA濃度が低い傾向があるため、DHEAサプリメントを錠剤で服用することは、免疫系を制御するのに役立つ可能性がある。DHEAは副腎皮質ステロイド剤投与の必要性も減少させる可能性があることから、副腎皮質ステロイドの副作用が少ないことを意味する。

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)の効果について

疾患の活性度(症状の再燃または変化)について:DHEAの服用により実際に疾患の活性度に違いが生じるか不明である。これらの結果は偶然に生じた可能性がある。総合的な健康について:1)0~100の尺度でさらに12ポイント改善臓器の損傷が少ない2)DHEAの服用による臓器損傷を軽減する可能性については、いずれの試験でも評価を行っていないため不明である。副作用と合併症について:軽度から中等度のSLE患者100例以上のうち20例では、DHEAで治療を行わない場合と比較し、DHEAで治療した場合は座瘡が認められるものと予測される。