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転移のない局所進行直腸癌に対する術前化学放射線治療

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アブストラクト

背景

転移のない進行直腸癌の手術前の放射線治療単独と比べた術前化学放射線治療の有効性を評価するため、本レビューを計画した。

目的

全生存、局所再発、30日死亡率、括約筋温存および治療毒性(急性期と晩期の両方)について、局所進行直腸癌を対象に放射線治療(RT)単独と比べた術前化学放射線治療(CRT)の有効性を明らかにすること。

検索戦略

2011年9月、臨床試験登録簿、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Science、EMBASEおよびMEDLINEを検索し参考文献リストをレビューした。関連性のある雑誌の抄録のハンドサーチも行った。言語の制限は設けなかった。<br /><br />以下の検索語を使用した:大腸、直腸、癌、癌腫、腫瘍、放射線治療、化学療法、化学放射線治療、5‐フルオロウラシル、5‐FU、ネオアジュバント、術前、手術、前方切除術、腹会陰式直腸切断術、全直腸間膜切除術

選択基準

転移のない局所進行直腸癌に対し、術前化学放射線治療または術前放射線治療を受けた18歳以上の男女。参加者の年齢の上限はなかった。転移のない局所進行直腸癌は、ステージ3期直腸癌と定義した。遠隔転移徴候のない、リンパ節転移を有する全てのT期の腫瘍であった。

データ収集と分析

主要アウトカムパラメーターは全生存率および局所再発率などであった。副次アウトカムパラメーターは、30日死亡率、括約筋温存、腫瘍の病理的奏効、治療の急性期と晩期の毒性などであった。アウトカムパラメーターは、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を用いて要約した。

主な結果

適格な6件のランダム化比較試験(RCT)を認めた。RT群に比べてCRT群で局所再発の減少がみられた(OR 0.56、95%CI 0.42~0.75、P < 0.0001)。全生存の結果は有意差なし、OR 1.01、95%CI 0.85~1.20、P = 0.88であった。<br /><br />30日死亡率は両群(CRT対RT)で同じであった(OR 1.73、95%CI 0.88~3.38)。括約筋温存(ストーマ率)も両群で同様であった(OR 1.02、95%CI 0.85~1.21、P = 0.64)。RT群に比べてCRT群で、グレード3/4の治療に関連した急性毒性の増加がみられた(OR 3.96、95%CI 3.03~5.17、P < 0.00001)が、この結果は異質性を示した(P = 0.0005)。晩期毒性イベントは2群間で同様であった(OR 0.88、95%CI 0.50~1.54、P = 0.65)。

著者の結論

T3~4のリンパ節転移陽性(局所進行)直腸癌の治療において、RTの有用性がより強力なCRTと比較された。RTとCRTは全生存について差はなかったが、CRTの方が局所再発が少なかった。

一般語訳

進行直腸癌患者に対する術前放射線療法と術前化学放射線治療を比較した論文

直腸癌の手術前の放射線治療と化学療法の併用を放射線治療と比較しました。リンパ節には転移しているが肝臓や他の臓器には転移していない直腸癌の人について調べました。<br /><br />両群で5年後の生存者数は同じであるという所見でした。言い換えれば、どちらかの治療の方が人を長生きさせるということはありませんでした。化学療法と放射線治療を併用した人では、放射線治療だけの人より短期的問題(下痢などの副作用)が多くみられました。しかし、どちらの治療を受けた人でも5年後に元の癌の場所での再発は少なかったという所見が得られました。これは重要な所見であり、これらの治療はどちらも有益であると示唆されました。