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統合失調症に対する催眠療法

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アブストラクト

背景

統合失調症の多くで、従来の治療法を用いても症状が持続する。従来の治療法に加えて催眠療法など代替療法が有用な可能性がある。

目的

統合失調症患者または統合失調症様疾患患者での催眠について、標準治療法および他のインターベンション介入を比較調査する。

検索戦略

Cochrane Schizophrenia Group's Register(2006年10月)を検索し、追加の検索ではCochrane Complementary Medicine Fieldに問い合わせ(2003年1月)、対象/除外とした試験の参考文献をハンドサーチし、関連のある試験の筆者に別個に問い合わせた。

選択基準

統合失調症患者を対象に、催眠療法とその他の治療法、標準治療法とを比較したすべてのランダム化または二重盲検比較試験を対象とした。

データ収集と分析

信頼性の高い試験を選択し、品質評価のうえデータを抽出した。また、いずれの試験群での試験参加者の50%以上が追跡不能となった場合はデータを除外した。二値アウトカムについて、このレビューでは固定効果リスク比(RR)および対応する95%信頼区間(CI)を算出した。

主な結果

3件の試験を対象とした(合計n=149)。催眠と標準療法を比較した場合、1~8週間では試験を脱落した患者はいなかった(n=70、2件のランダム化比較試験[RCT]、リスク差0.00 CI:‐0.09~0.09)。精神状態スコアへの影響は認められず(n=60、1件のRCT、1週間のMD BPRS:‐3.6、CI:‐12.05~4.8)また運動障害および神経認知機能指標への影響も認められなかった。リラクゼーションと比較し、催眠療法は受け入れられた治療法であり(n=106、3件のRCT、試験早期中止のRR:2.00、CI:0.2~2.15)、また精神状態(n=60、1件のRCT、1週間のMD BPRS:‐3.4、CI:‐11.4~4.6)、運動障害または神経認知機能への影響については判別がつかなかった。催眠療法は音楽療法(シベリウス)と同様に4週目まで受け入れられる療法であった(n=36、早期研究中止例のRR:5.0、CI:0.3~97.4)。

著者の結論

この分野の試験はほとんどなく、小規模であり、報告の品質が悪く、また古い。催眠療法が統合失調症患者で有用となる可能性がある。この点を明らかにするためには、デザイン、実施および報告において改良されたランダム化試験が必要であると考える。今回の更新で、2003年以降この領域で新たな試験が確認されていない。

一般語訳

統合失調症に対する催眠療法

統合失調症は、重大な精神疾患であり、状況理解の仕方や感覚に変化を生じさせる。引きこもりが生じる場合もある。先進国の場合、すべての患者で反応が認められるわけではないが、統合失調症の治療方法は主にさまざまな抗精神病薬を用いる。対話療法、リラクゼーション、催眠療法およびその他代替療法など他のインターベンション法が有用であることが示唆されており、ほとんどの場合薬剤が追加的に使用される。このレビューでは、検索で確認された試験で、統合失調症治療での催眠療法の使用について、リラクゼーション、音楽療法および標準療法と比較検討する。合計149名が参加した3件の試験が確認された.これら試験はすべて1983年以前に実施されており、比較的短期間であった(8週間、4週間および1週間)。これらの試験でのデータ報告方式および対象患者数により、催眠がその他の介入よりも優れていることを示す決定的なエビデンスは得られなかった。ほとんどの患者が試験を中止しなかったことから、催眠療法、リラクゼーションおよびクラシック音楽(シベリウス)による療法は少なくとも許容できる介入であることが示唆された。催眠療法を統合失調症の治療選択肢とする可能性に関して、より良い情報に基づく結論を導くためには、参加者の症状、機能および生活の質の改善などの転帰を十分に測定する試験を適切に実施することが必要である。

(このレビューの平易な要約は Janey Antoniou of RETHINK, UK 1www.rethink.orgが作成した)