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早期産児における罹病率および死亡率の予防改善を目的とするビタミンEの補充

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アブストラクト

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背景

早期産児の網膜症、頭蓋内出血、溶血性貧血および慢性肺疾患の予防あるいは進行を止めることを目的として、抗酸化剤として薬理学的用量のビタミンEを用いた極低出生体重(VLBW)児の治療が提案されている。しかし、ビタミンEの過剰投与によって、結果として副作用を懸念することになるおそれがある。

目的

早期産児における罹病率および死亡率に対するビタミンE補充療法の効果を評価すること。

検索戦略

MEDLINE(2002年10月)、EMBASE(2002年3月)、 Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL、コクラン・ライブラリー、2003年1月発行)ならびに早産児に対するビタミンEの効果を評価する臨床試験に関する個人データファイルを検索した。MEDLINEおよびCCTR検索は2007年3月に更新された。

選択基準

妊娠期間が37週未満、あるいは出生時体重が2500グラム未満の新生児における主要評価項目(死亡率または複合長期罹患率)、または副次的評価項目(他の死亡率)を解析した試験を選択した。介入は、プラセボ群、無治療群あるいは他のタイプの群、即ちビタミンE種類、投与量、投与経路が異なる群に対して、ビタミンEを日常的に補充する治療群に割り付けることであった。

データ収集と分析

コクラン共同計画およびコクラン新生児レビューグループの標準的方法を用いた。

主な結果

26のランダム化臨床試験は登録基準を満たした。複合長期罹患率を評価した研究はなかった。ビタミンEの日常的な補充によって、ヘモグロビン濃度をわずかではあるが有意に増加した。ビタミンEにより、胚層/脳室内出血リスクが有意に減少し、敗血症リスクは増加した。しかし、これら二つについては異質性によって強さが限られたものになっている。ビタミンEは他の罹患率あるいは死亡率に有意に影響しなかった。検討した対象においては、VLBW児に対してビタミンEを補充することで敗血症のリスクが有意に増加し、重症の網膜障害および失明のリスクが減少した。サブグループ解析によって次のことが実証された。(1)静脈内投与、高用量のビタミンE補充と、敗血症および脳実質内出血のリスクの増加との関連;(2)静脈内投与以外のビタミンE補充と胚層における脳室内出血および重症脳室内出血のリスクの低下との関連;(3)3.5 mg/dlを超える血清トコフェロール濃度と検討対象における敗血症リスクの増加および重症網膜症リスクの減少との関連。

著者の結論

早期産児に対するビタミンEの補充により、脳室内出血リスクが減少した。しかし、敗血症リスクは増加した。検討した対象においては、極低出生体重児に対してビタミンEは敗血症のリスクを増加させ、重症網膜症および失明のリスクを減少させる。高用量での静脈内投与によるビタミンE補充を日常的に行うこと、又は血清トコフェロール濃度が3.5 mg/dlを超えることを目標とすることを裏付けるエビデンスはない。

PICOs

Population
Intervention
Comparison
Outcome

The PICO model is widely used and taught in evidence-based health care as a strategy for formulating questions and search strategies and for characterizing clinical studies or meta-analyses. PICO stands for four different potential components of a clinical question: Patient, Population or Problem; Intervention; Comparison; Outcome.

See more on using PICO in the Cochrane Handbook.

一般語訳

早期産児における罹病率および死亡率の予防改善を目的とするビタミンEの補充

早期産児に対して追加のビタミンEを投与することで、多少有益性が得られるが、致死的な感染リスクが増加する。器官が未発達であることから、早期産児(37週以前)は様々な障害を起こすことがある。ビタミンEはこれらの障害の一部を予防あるいは制限する可能性があるが、有害作用が発現する可能性もある。早期産児に与える母乳中のビタミンEは通常のレベルよりも高くなる。早期産児に追加のビタミンEをビタミン滴剤として、ビタミンE強化調合乳として、静脈内投与あるいは筋肉注射によって投与することがある。このビタミンE補充に関する試験のレビューによって、ビタミンEを追加投与により一部の合併症(例えば網膜の病気)になる可能性が減少し、致死的な感染症のリスクが増加することがわかった。追加のビタミンEが静脈投与された場合、脳出血のリスクは増加するが、他の投与経路で投与された場合、リスクは減少する。